FOOTBALL VISION ホーム ▸ 2016年8月22日 繋いだ絆。未来へと続く平和への道筋。

繋いだ絆。未来へと続く平和への道筋。

 2016年春、広島の高校生18人は、ポーランドの南方に位置する、アウシュビッツ強制収容所にいた。

 自分たちが何度も行っている広島の平和公園や平和祈念資料館、幾度となく学んできた戦争と平和、8500km離れた異国の地でその意味を感じていた。

 昨年来広した、チェルシー(イングランド)所属のU-17ポーランド代表主将のアダムチェクは、広島平和祈念資料館での平和学習を終えて、「僕たちも子どものころからアウシュビッツについて多く学習しているが、広島でも同じように戦争によって多くの方々が亡くなった。今日学んだことは自分の心に深く刻まれた。」と語っていたが、今回アウシュビッツを訪れた広島皆実高校の吉田は、「アウシュビッツに行って,歴史は酷いもので,昔だけではなく今でも同じようなことが繰り返されて,関係のない人々が殺されていることは少しでも早くやめないといけないと思いました。何のためにアウシュビッツや原爆ドームなどが残されているのかをしっかりと世界の多くの人々に知ってもらいたいと思いました。」と述べ、昨年広島で原爆について学んだポーランドの同世代の選手たちと同じように、心にくるものがあったようだ。

 広島県高校選抜が行ったポーランド遠征は、今年、2016年3月下旬にポーランドを訪れたものだ。これに対してポーランドサッカー協会は、異例ともいえる、U-18ポーランド代表チームで彼らと親善試合を行った。この試合が実現したのも、前年の平和祈念広島国際ユース大会があったからに他ならない。ポーランドまで来てくれた、前年からの絆がある広島県高校選抜に対し、ポーランドサッカー協会は最大限の敬意を示したと言えるだろう。

 前年の広島での大会で、ポーランドは初戦でウズベキスタンにPK戦の末敗れ、広島と日本には勝利するも、2勝1分けで準優勝という結果に終わったが、飛行機も遅延し、20時間以上かかった長時間移動や、選手たちが初めて体験した日本の蒸し暑さが、彼らのコンディションに少なくない影響を及ぼしたことは否定できない。対して今回、ポーランドのホームゲームのような形で対戦できたことは、広島県高校選抜の選手たちにとってポーランドの強さを肌で体感する機会となった。
 0-4で敗戦したその試合から広島県高校選抜の選手たちは、試合後、自分たちが体感した様々な違いを口にした。
 「スピード,体格,切り替えの速さなど相手のほうが確実に上回っていた。ポーランド代表との試合は今までの試合の中で一番楽しかったですし,良い経験でした。」と、大石(広島皆実高校)は語り、GKの多々良(広島皆実高校)は、「本当に良い経験をすることができました。体格,フィジカル,スピード,止めて蹴ることの精度,ゴール前での技術,トップスピードでの技術などの差を感じました。また,速いパス回しなので,サイドに追い込んではめても,1対1でかわされ,DFを引っ張り出されてスペースを使われ失点する場面がいくつもありました。ポーランドのGKは,反応,セービング,ダイビングなどはとても上手だった。ポーランドの選手との差はとても大きく,まだまだだと気付くことができました。これからの意識のレベルを全国ではなく世界に変えて練習していこうと思いました。ポーランド代表との試合など,素晴らしい経験ができたのでこれを大切にしてこれからもがんばっていきたいと思います。」と感想を述べ、世界屈指のGK輩出国としても知られるポーランドのGKとの違いも感じていた。
 それぞれが肌で感じた違いは、彼らの今後の成長に繋がっていくことだろう。

 また、「ワルシャ旧市街観光やスタジアムツアー観光,ポーランドvsセルビアの国際Aマッチなどどれもとても楽しく二度と経験できないことでした。特に,代表戦での海外の観客の応援や雰囲気,代表選手のプレーはとても刺激的だった。レヴァンドフスキーを生でみれてよかった。また,アウシュビッツ強制収容所見学も世界の悲惨な歴史を学ぶことができて多くのことを感じることができた。遠征中,経験したすべてのことが刺激的で楽しく本当に今までにないくらい充実した9日間だった。チームの雰囲気も良く試合をするたびに強くなっていくのを感じることができた。」という、大石(広島皆実高校)のコメントからもいかに充実した遠征であったかを物語っている。

 昨年、U-17ポーランド代表チームが平和祈念広島国際ユース大会に参加したことがキッカケとなり、このような交流が実現している。

 アウシュビッツを訪問して歴史を肌で体感し、平和の意味を感じたり、同世代の異国の人たちと交流したりすることは、1人の人間として成長していくことに繋がるであろう。
 そして、人として成長することも、サッカー選手として成長することも、決して別のことではないと感じる。昨年、U-17ポーランド代表を率いたラファウ・ヤナス監督は、平和祈念公園を訪れた後にこうコメントした。
 「10代の彼らはいま、様々なことを吸収する力が強い。人として成長することはサッカー選手として成長することに繋がる。今日のこの経験は必ず彼らの今後のサッカー人生にも大きく影響するだろう。」

 今年もU-18ポーランド代表チームが、昨年に引き続き広島平和祈念国際ユース大会に参加するために、広島にやって来た。

Balcom BMW CUP 平和祈念 広島国際ユースサッカー 2016 OFFICIAL NEWS WEB SITE

 広島とポーランドのこの交流が続いていくことは、戦争の痛みを知る両者の絆を深め、それはきっと平和への道標となっていくことだろう。

2016年8月22日
編集長 柴村直弥

編集者

『FOOTBALL VISON』の記事を執筆している編集者を紹介します。