FOOTBALL VISION ホーム ▸ 2015年12月11日 「図書館」と「難民」と「サッカー」

「図書館」と「難民」と「サッカー」

 タイ北西部の中心都市のチェンマイから南西へ車で6時間。でこぼこ道を四輪駆動のトラックで頭を天井にぶつけたりしながら苦労して走る。雨季はトラックに泥道用のタイヤのチェーンとスコップ、倒木を切るノコギリを積んで走る程の険しい道のりだ。
 

 「メラマルアン難民キャンプ」はタイ・ミャンマー国境の山中にある。タイ・ミャンマー国境に9ケ所11万人が避難生活をする難民キャンプの一つ。難民キャンプは外の社会から完全に閉ざされた社会。
 今年の6月20日は「世界難民の日」。それに合わせて6月19日、恒例のサッカーフェスティバルと教室が開催された・主催したのは、難民キャンプで2001年から図書館の支援を行う私たちシャンティ国際ボランティア会。Jリーグからも正式に今年も後援を頂いた。在タイ日本大使館の協力や国際交流基金からの助成も頂いた。
 山の斜面と川沿いのわずかな土地に、竹と木の葉で造られた高床式の家が並ぶ。キャンプではミャンマーのカレン族を中心に避難生活を送っている。
 このキャンプに住む人々の半数が18才以下の子どもたちだ。大半はキャンプで生まれ、祖国を知らない。故郷は難民キャンプだ。サッカー教室は、閉鎖的な難民キャンプで世界を広げて、夢に向かって困難を克服してもらおうと始め、今年で4回目の開催。

 第1回と第2回は丸山良明さん(現在、セレッソ大阪U18コーチ、Jリーグ・アジアンアンバサダーがメラ難民キャンプ、ウンピアム難民キャンプで指導。
 難民キャンプは人里から離れているために、外部との交流はほとんどない。それでも、サッカーは大人から子どもまで大人気。今年は昨年に続き難民キャンプで2回目の元Jリーガーでバンコク在住の本田慎之介さん指導のもとにサッカー教室が始まると、子どもたちは大興奮。何しろ元Jリーガーと一緒にサッカーができるのだ。(※上記写真1枚目参照)
 本田さんは「どんな環境でも夢を持って欲しい。サッカーの楽しさや友情、チームワークの大切さを伝えたい」と語った。難民キャンプのグランドは、泥の上に石が交じる。靴を履いても足が痛い。それでも子どもたちは、裸足やサンダルでボールを追いかける。「日本の同世代の子どもは、こんなでこぼこのグラウンドでは走れないのではないか。走れてもすぐ怪我をしてしまうのではないかと」本田さん。
 子どもたちの中には、サンダルをなくすのを心配しているのか、大切に手で持って走っている姿もある。歓声と笑顔がグランドにあふれる。
 本田さんは難民キャンプにある図書館で子どもたちに「夢はワールドカップ」の絵本の「おはなし」にも挑戦。本田さんが日本語で話をして、カレン語の通訳を入れたが子どもたちは熱心に聞き入った。(※上記写真2枚目参照)

 国際協力の分野では、「スポーツでの国際協力は、最高の平和構築」と注目されている。
 勝ち負けだけでなく、相手を称えて、ルールを守る。練習を通して困難を克服する。こうしたことで不屈の精神、友情やチームワークを育むからだ。
 ミャンマーの選挙結果を受けて新しいミャンマー政府と少数民族との停戦交渉や帰還問題など難民キャンプには懸念材料も多々ある。
 それでもサッカーは不安を忘れさせ、明日への生きる元気をくれる。「夢を明日への生きる力に」と願わずにはいられない。
 難民キャンプだけではなく近い将来、ミャンマー国内やカンボジア、ラオス等の辺境の地など、より困難な問題を抱える国での「本と図書館」と「サッカー」の夢のコラボ−Jリーグと国際協力型NGOの国境を超えた新しいコラボを夢見ている。「サッカー」と「本の力で」子どもたちの未来を変える。そして、「平和」につなげる。

2015年12月11日
八木沢 克昌

編集者

『FOOTBALL VISON』の記事を執筆している編集者を紹介します。