FOOTBALL VISION ホーム ▸ 2015年6月08日 なぜポーランドは優秀なGKを輩出し続けることができるのか?

なぜポーランドは優秀なGKを輩出し続けることができるのか?

 去る5月27日、ポーランドはワルシャワのナショナルスタジアムで行われた2014-2015UEFAヨーロッパリーグ決勝…

 ウクライナのドニプロ対スペインのセビージャというカード。開始早々のドニプロの先制点を皮切りに、セビージャでプレーするポーランド人選手クリホビアクの同点ゴールで観客で埋め尽くされたワルシャワのスタジアムは熱狂した。逆転したセビージャに対して前半の内にドニプロは同点に追いつき、最後はセビージャのバッカがこの日2点目となる決勝点を決めて、セビージャ3-2で勝利し、UEFAカップ/UEFAヨーロッパリーグ史上最多となる4度目の優勝を成し遂げた。

 この2014-2015シーズンのUEFAヨーロッパリーグ決勝のアンバサダーを勤めたのはポーランド人GKのイェジー・ドゥデク。
 2001年から2007年までリバプールFCで守護神として184試合に出場している人物である。
 一昨日FCバルセロナの優勝で幕を閉じた2014-2015UEFAチャンピオンズリーグから遡ることちょうど10年前。イスタンブールで行われた2004-2005シーズンのそのUEFAチャンピオンズリーグ決勝、リバプール対ACミランの試合で、前半0−3でリードされていたリバプールが後半に3−3の追いつき、PK戦の末リバプールが勝利した、イスタンブールの奇跡と呼ばれたあの試合…
 記憶に残っているサッカーファンの方々も多いと思うが、あのゴールを守っていたGKがこのドゥデクである。PK戦の際にはキッカーが蹴る際に身体を上下左右に動かしてキッカーを困惑させ、ピルロとシェフチェンコのPKをセーブし、優勝に大きく貢献。UEFAゴールキーパー・オブ・ザ・イヤーにもノミネートされた。
 UEFAチャンピオンズリーグで優勝を果たしたポーランド人GKは、ユヴェントスの守護神として活躍したズビグニェフ・ボニエク、FCポルトなどで活躍したユゼフ・ムイナルチクに続いて、ドゥデクは3人目であった。

 ポーランドは世界屈指のGK輩出国と呼ばれている。

 ドゥデク、ボエニク、ムイナルチクなどだけでなく、現在イングランドプレミアリーグのアーセナルの正GKとしてゴールを守っているヴォイチェフ・シュチェスニーは、若干25歳にして現在までにアーセナルでリーグ戦にすでに132試合に出場している。アーセナルで正GKの座を掴んだのは若干20歳のときであった。当時、アーセナルのベンゲル監督は以下のようにコメントしている。
「シュチェスニーはアーセナルF.Cの正GKを任せられる器だ。そして我々にはファビアンスキもいる」
 シュチェスニーとアーセナルでポジション争いを演じていたウカシュ・ファビアンスキ(2014年より同リーグのスウォンジーで正GKを勤めている)もまたポーランド人である。
イングランドで言えば、マンチェスターUで6年間活躍したトマシュ・クシュチャクもポーランド人だ。
 イングランド以外の国でも、アルトゥール・ボルツもセルティック、フィオレンティーナ、サウサンプトンで守護神として活躍しているし、現在スペインリーガエスパニョーラのエルチェCFの正GKとして活躍しているGKティトンもまたポーランド人である。リーガエスパニョーラ2014-2015 エイバル対エルチェCF ハイライト


 他にも数え上げればキリがないが、なぜポーランドでは長年に渡りこれほどまで多くの優秀なGKが育っているのか?

 まず、比較的分かり易い要因としては、ポーランド人は比較的身長が高く、体格の良い人種であることが挙げられる。
しかし、これはポーランドだけに限らず、欧州諸国でも同じような体格を持つ国もあるため、それだけが理由とは言い難い。

 次に、ポーランドではGKもゴールを決めるFWと並んで人気ポジションの1つであることも挙げられるだろう。ポーランドでは、GKにスポットが当たり、GKがヒーローにもなりうることも少なくないこともあり、GKをやりたがる子どもたちも多いということも理由の1つだと考えられる。

 前述したように人種的に身長が高く比較的体格の良い選手が多く、GKも身長が190cm以上ある選手が珍しくないどころか、190cm以下のGKの選手のほうが珍しいくらいである。そうした190cm以上あるGKが数多くいる中で、育成年代から凌ぎを削り、厳しい競争に打ち勝ったほんの一握りの選手だけがプロになれるため、数と競争の原理から考えても優秀なGKが生まれてくることは容易に想像できる。

 さらに、ポーランドでは1対1の戦いが比較的重要視されるため、試合において前提としてDFは相互間でカバーし合って守ることよりも、相手FWに対して1対1で守ることをより求められる。フィールドプレーヤーにはそのスキルが身に付くとともに、GKはDFがかわされてGKとの1対1になる局面も多く、それを止めることが求められる。そのような試合を育成年代から常にこなしてきていることでスキルが上達していくのである。

 そして、レヴァンドフスキ(バイエルン)に代表されるように、ポーランドには突出したFWも生まれる土壌がある。実際にポーランドリーグでプレーし、対戦したり観たりした私の感覚では、個人の力で突破でき、ゴールに貪欲な得点力のあるFWが数多くポーランドには存在している。
 今シーズン(2014-2015シーズン)のポーランド1部リーグの得点ランキングを見ても、1位〜5位までの5人中4人がポーランド人選手であり、得点王もポーランド人選手である。
 そのようなFWと日々練習や試合で対戦しているGKのレベルが上がっていくことは必然であろう。

 ポーランドのGKの育成では12,3歳くらいから独特な器械体操、マット、新体操のようなものを取り入れて行うクラブもあり、選手たちの間接が非常に柔らかい傾向にある。先日、日本からポーランドに子どもたちを連れて遠征に来たある指導者の方が、「ポーランド人のGKは、肩でボールを吸収していますよね。」と私に言ってきた。肩の間接が柔らかいため、ボールの勢いを吸収することができるのである。

 上記の写真は、今シーズン、ポーランド1部リーグを3位で終え、来季のUEFAヨーロッパリーグの出場権を獲得したヤギロニアの試合前の集合写真である。このポーランド人GKのドラゴフスキはまだ若干17歳だが、ヤギロニアの正GKとして今季29試合に出場した。このように若い世代からも随時優秀なGKが生まれてくる。

 GKのレベルの高さは私がポーランドに来る前に想像していた以上であった。1部リーグや2部リーグだけでなく、4部リーグや5部リーグでも、身長が190cm以上あり、機敏に動けてセービングや判断も良いGKが数多くプレーしている。

 一過性のものではなく、これまで長年に渡り世界屈指のGK輩出国と言われてきたポーランド。これからも数多くの優秀なGKを輩出していくことであろう。育成年代から含めたトレーニング方法など、日本が学べることが数多くあるかもしれない。

photo by ekstraklasa.net

2015年6月08日
編集長 柴村直弥

編集者

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